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電車を降りて駅から大学までの道でも、すれ違う女性が振り返って僕を見ている。
いくつもの視線に晒されて、大学に辿り着くまでにすっかり疲れてしまうのだが…。
「あ!北の王子が来た~」
「今日も凛としていて麗しい……」
大学に到着しても視線に晒されるのは変わらない。
田舎から東京に出てきて、大学に通い始めて1ヶ月。僕は好奇の目で見られるのにすっかり疲れていた。
大体なんだよ……。
北の王子って恥ずかしいあだ名は。
北野静流、僕の名前の苗字をもじって『北の王子』と呼ばれるのには理由がある。
なぜならば……。
「あ!南の王子も来た!」
「今日も爽やかだわね~」
校門から爽やかな笑顔を振りまいて、華やかな男が入って来た。
南野貴文。
『南の王子』と呼ばれるもう一人の王子だ。
華やかで社交的で……貴文は王子と呼ばれるのに相応しい。
皆に見られても全く気にする様子もなく、羨ましいと思って静流は貴文を眺めていた。
「あ!北野君、おはよう」
「………うん」
貴文に急に声をかけられ、静流は驚いて短い返事をするのが精一杯だ。
貴文のキラキラオーラが凄すぎて……眩しすぎて顔が見られない……。
「北野君、一限は英語でしょ。一緒に行こうよ」
「いや……。僕は一人がいいから」
にこにこと話しかけてくる貴文から、静流は早く逃げたかった。
こんな目立つ男と一緒に居たら、更に目立ってしまうじゃないか。
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