第1話

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静流が座っていた席に山口がどかりと腰を下ろす。 「驚いた……初めて近くで見たけど、北の王子、超綺麗だった……」 「でしょ。俺もあんまり綺麗だから、男だって分かっててもドキドキしちゃってたよ」 切れ長の目に長い睫毛……きめ細かい肌にサラサラの髪の毛。 静流が忌み嫌う容姿は、他人から見たら本当に素晴らしいものなのだ。 「でも、静流って見た目だけじゃなかったよ。話してて凄く面白かった」 「面白いのか?いつもツンとしてて性格キツそうに見えるけど……」 「全然キツくないよ。綺麗すぎてキツく見えるけど、すごく良い奴だ」 「お前がそう言うならそうなんだろうな」 そうだよと、貴文は満面の笑みで答えた。 貴文の手元には食べ終わった静流の弁当箱がある。 これを返す口実で早速連絡ができるなと思って、貴文はウキウキと心が弾んでいた。 あんなに本音で色々話せたのは初めてだ。 初めて静流を見た時から、ずっと気になっていて……ようやく友達になれたのが本当に嬉しい。 社交辞令など言わない静流の正直なところも好ましかった。 素っ気ない感じも、冷たいのではなく人との距離の取り方が分からないだけなのだろうということも分かって、益々静流を知りたいと思う。 きっと俺と静流は親友になる。 貴文はそんな予感がしていた。
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