第1話

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食堂から次の講義のある六号館まで歩きながら、静流は貴文のことを考えていた。 僕なんかにあんなに絡んできて……アイツは相当変な奴だ。 人付き合いに無理をしすぎているみたいだから、僕みたいなのが珍しいのだろうか。 一緒に居ると、華やかなオーラで押しつぶされそうだった。 友達になるとは言ったが、できれば距離を取ってあまり親しくならないようにしないと。 まあ、視界に入らないようにしていればきっと大丈夫だろう。 静流がそう思っていた矢先に携帯が鳴った。 発信者を見れば、今別れたばかりの貴文だ。 『もしもし静流?もう六号館着いた?』 「もうすぐ着くところだ。何の用だ?」 『静流のお弁当箱、俺が持ってるからさ。今日って何限まで授業ある?』 「三限で終わりだけど……」 『じゃあ三限終わったら六号館に届けるね』 待て! わざわざ届けに来なくていい……! そう返事をする間も与えず貴文からの電話は切れてしまった。 何なんだアイツは。 完全に貴文のペースに巻き込まれている。 都会人、やっぱり恐ろしい……。 田舎者の僕なんかに太刀打ちできる相手じゃないんだ。 はぁとため息をつくと、遠くの方でキャーと声が上がった。 「憂いを帯びた王子も素敵!」 「本当に美しい……」 本当に勘弁してくれ。 うかつにため息もつけないなんて窮屈すぎる。
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