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食堂から次の講義のある六号館まで歩きながら、静流は貴文のことを考えていた。
僕なんかにあんなに絡んできて……アイツは相当変な奴だ。
人付き合いに無理をしすぎているみたいだから、僕みたいなのが珍しいのだろうか。
一緒に居ると、華やかなオーラで押しつぶされそうだった。
友達になるとは言ったが、できれば距離を取ってあまり親しくならないようにしないと。
まあ、視界に入らないようにしていればきっと大丈夫だろう。
静流がそう思っていた矢先に携帯が鳴った。
発信者を見れば、今別れたばかりの貴文だ。
『もしもし静流?もう六号館着いた?』
「もうすぐ着くところだ。何の用だ?」
『静流のお弁当箱、俺が持ってるからさ。今日って何限まで授業ある?』
「三限で終わりだけど……」
『じゃあ三限終わったら六号館に届けるね』
待て!
わざわざ届けに来なくていい……!
そう返事をする間も与えず貴文からの電話は切れてしまった。
何なんだアイツは。
完全に貴文のペースに巻き込まれている。
都会人、やっぱり恐ろしい……。
田舎者の僕なんかに太刀打ちできる相手じゃないんだ。
はぁとため息をつくと、遠くの方でキャーと声が上がった。
「憂いを帯びた王子も素敵!」
「本当に美しい……」
本当に勘弁してくれ。
うかつにため息もつけないなんて窮屈すぎる。
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