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「南野君来てくれるから北野君も来てくれたら嬉しいんだけど…。バイト休めない?」
「無理」
その後も、顔だけでも出してくれたらと食い下がってきたが、講義が始まってくれたのでその話はひとまず終了した。
貴文、合コンとか行くんだな。
貴文なら場を明るく盛り上げてくれてくれそうだ。
だが、アイツは本当にそれで楽しいんだろうか……。
自分が貴文のことを考えていたことに驚き、僕は頭を振って講義に集中した。
講義終了後に、また女子に捕まりそうになるのを振り切って建物の外に出ると、ベンチのところに貴文が座って待っていた。
優雅に足を組んでベンチに座る貴文は絵になっていて、こんな人が友達になったなんて嘘みたいだと静流は思った。
「三限、ちゃんと出たのか?」
「出たよ。最後の10分だけ抜けてきちゃったけど。はい、お弁当箱。ご馳走様でした」
貴文に渡された空の弁当箱は、綺麗に洗われていた。
貴文は意外とマメなのだなと、静流は感心する。
「静流、帰りに一緒にお茶でもしない?」
「駄目だな。バイトだから」
「残念………」
「合コンに行くんだろ?君だって忙しいんじゃないのか?」
ああ………と、貴文は微妙な顔をした。
「人数合わせで呼ばれたんだよ。別に合コンなんて行きたくないんだけどさ」
「行きたくなければ行かなきゃいいのに」
静流がそう言うと、貴文はふふっと笑った。
静流ならそう言うと思った。
行きたくもない合コンなんて、静流は絶対に行かないだろう。
「付き合いがさ、あるから…仕方ないよ」
「そういうものなのか?大変だな…」
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