第1話

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「ごめんな、ありがとう。君、名前は?」 「北野、北野静流です」 「静流君、本当に感謝するよ」 サラリーマンが出て行くと、静流は一人になれてホッとしていた。 マスクとゴーグルのおかげで、いつもより知らない人とスムーズに話すことは出来るが、それでもやはり緊張する。 押さえるコツも分かってきたし、メンテナンス会社の人が来るまでこのまま頑張ろう。 メンテナンス会社が到着し、修理が終わると静流はびしょ濡れになった床や壁を丁寧に掃除した。 下着まで濡れて気持ち悪かったが、このままここが汚いままなのも許せない。 修理と清掃はほぼ同時に終了し、静流は清掃用具を持ってトイレから出た。 さて、着替えはあるとして…。 下着の替えまでは持っていない。ノーパンで帰るしかないのか。ノーパンでズボンを穿いたらどうなるんだろう……擦れて痛そうだな。 ノーパンの件で頭がいっぱいで、静流は自分を呼ぶ声に気が付かなかった。 「静流君!ちょっと!静流君!」 ん?誰か呼んだかな? 声のする方を振り返ると、先程のサラリーマンが手を振っている。 びしょ濡れだった服を着替えて髪も乾いているその人は、改めて見るとなかなかのイケメンだった。 今日はイケメンに縁のある日だ……。 「さっきはありがとう!服、濡れちゃってるね。着替えの服をプレゼントするからこっちに来てくれる?」 「プレゼントって……。着てきた服があるから大丈夫です」 「そんなこと言わないで。お礼させてよ」 「あ………。なら、パンツがあればありがたいのですが…」
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