第1話

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「モード系もいいけどカジュアルも……素材が良すぎて悩むわぁ」 「本当にあの、パンツだけで……」 「薫、髪もやってあげてね」 「勿論よ!」 二人とも、僕の話を全く聞いてくれない。 いそいそと僕の服を二人で勝手に選んでいる。 これは僕が着替えるまで解放されない気がする。 僕が助けたサラリーマンは雅文さんと言うらしい。コーディネートしてくれているのは薫さん。 二人とも最上階フロアに居るということは、この会社の偉い人なのだろう。 逆らうとバイトを首になるかも……。 この仕事は失いたくないので、僕は腹を括って二人にされるままにすることに決めた。 「静流君、何で清掃のバイトなんかしてるの?君ならモデルとかのバイトで稼げそうなのに」 「掃除が好きなんです……」 「そうなんだ。若いのに偉いねぇ」 雅文さんはにこにこしながら僕のことを見ている。 その笑顔には見覚えがあった。 そうだ。貴文に似てるんだ。 「はいっ。じゃ、そこの隣の部屋でこれに着替えてきてね。下着も、ほらこれ」 渡された衣服を持って隣の部屋で僕は素直に着替え始めた。 さっさと着替えて早く解放してもらおう。 ツルツルの素材のパンツ…シルクって書いてあるけど凄く高いんじゃないだろうか。 服も……いつも着ている量販店の服よりもかなり高級そうな気がする。 「ちょっと!まだ?手伝ってあげましょうか?」 「き、着替えました、もう着替えましたから」
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