第2話

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第2話

エレベーターで一階ロビーまで降りると、ロビーに居た会社の人達が僕達を見て一斉に頭を下げてきた。 「副社長、そちらは新しいモデルさんですか?」 「いいでしょ?彼。新ブランドのイメージにピッタリでしょ」 「本当に……。流石です副社長」 副社長?雅文さんが? 僕がモデルと言われたことよりも、雅文さんが副社長だったということに吃驚する。 なるほど。 だからこんなに簡単に高そうな洋服をプレゼントしてくれたんだ。 「さ、静流君行こうか」 ロビーの隅の方で清掃バイトの先輩の荒川さんが驚いた顔で僕のことを見ている。 助けて欲しいと荒川さんを見つめると、荒川さんはぽっと頬を染めて目を逸らしてしまった。 そうじゃない。 助けて欲しかったのに…………。 雅文さんと薫さんに連行されたまま、僕は正面玄関に横付けされた高級車に乗せられて運ばれて行く。 学校では貴文。 バイト先では雅文さんと薫さん。 今日は本当になんて日だ。 こうなったらさっさと食べて早く失礼しよう。 知らない人との食事など、憂鬱で楽しめるはずもないと思っていた静流だったが…。 連れてこられたイタリアンの店は、静流が今まで食べた事の無い程美味しい店だった。 盛り付けも小洒落ていて、食べるのも作るのも好きな静流はその料理にすっかり魅力されてしまった。 しまった……楽しい。 雅文も薫も話題豊富で、静流がそんなに話さなくても二人の話を聞くだけで楽しかった。
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