第2話

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緊張して表情の硬かった静流が、だんだんリラックスして嬉しそうに食事をするのを雅文は笑顔で見つめていた。 吃驚するくらい綺麗な顔をしているのに、静流はいい意味で素朴な感じで都会に全く染まっていない。 トイレの件で今日は酷い目に遭ったが、この子を発見したのは大きな収穫だと雅文は思っていた。 この子はダイヤの原石だ。 磨く前からこんなに光っているのだ。 手元に置いて輝かせたい。うちの会社の顔に十分なれる素質がある。 「ご馳走様でした」 「もういいのかい?」 「はい。ありがとうございます。明日も学校があるので、そろそろ失礼させていただいてもいいですか?」 食事は楽しかったが、もう疲れた。 早く家に帰りたかった。 「じゃあ家まで送るよ」 「まだ電車がある時間なので大丈夫です。本当にありがとうございました。失礼します」 一気にお礼を述べると静流は立ち上がって二人に頭を下げると、さっさとレストランから出て行った。 鮮やかな去り際に、残された雅文と薫はぽかんと口を開けたまま見送るしかなかった。 「なんだか、色々凄い子だったわね」 「いいね……静流君。ものにしたいな」 「雅文さんが言うやらしく聞こえるわ」 「会社のって話だろ。あの子ノンケだろ。いやらしい目では見てないって」 静流の切れ長の瞳を思い出しながら雅文は快活に笑った。 あの子は絶対にうちの会社で貰おう。 そう心に決めていた。
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