第2話

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「さ、誤解も解けたみたいだし。昼ご飯でも作るから待っててくれ」 静流が再び狭いキッチン部分で料理をするのを、貴文はぼんやり眺めていた。 抱いたと思っていたのは誤解か……。 そうだよな。 いくら酔っていても、男に手を出すことはないよな……。 料理をする静流は楽しそうで、学校では見られない生き生きとした表情をしている。 男性とは思えないほどの美貌を気にする様子もなく、普段着の静流はとても可愛く見えた。 可愛い? 俺は静流のことを可愛いと思ったのか? 「貴文、食べ物にアレルギーとかないか?」 「な、ないよ。好き嫌いもない」 「分かった」 急に静流に話し掛けられて動揺するのを悟られないように、貴文はなるべく普通に答えた。 何でこんなにドキドキしてるんだ。 こんなの絶対におかしいだろう……。 「よし、できた。食べるか」 静流が作ってくれたのは親子丼と味噌汁。 丼は一つしかないので、静流は深めの皿に自分の分をよそって来ていた。 誰かを招いて料理を振舞ったのなんて初めてなので、客用の食器なんて勿論ない。 「美味そう……。静流、皿でいいのか?丼の方が食べやすくないか?」 「一応君はお客さんだから。ま、どの皿で食べても味は同じだしな」 「今度皿とか買って持ってくるな」 「君はまた飯をたかりに来るつもりか?」 静流は呆れて笑いながら食べ始めた。 こんなに笑う奴だったんだな。 いつもクールで表情が変わらなかったけど……笑うと年齢相応に見えて可愛いな……。
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