第2話

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「静流も今度一緒に行く?」 「いや、ジムに行くお金なんてないよ」 「無料体験できるから、お試しで行こうよ」 無料か。 無料ならいいかな。 体験してみて自宅でも取り入れられそうな運動を学んで来れるかもしれない。 「体験なら……。今度連れて行ってくれ」 「うん。じゃあ静流のバイトが休みの日に行こう」 貴文が見た目とは違う親しみやすい人物だと知って、静流の警戒心はすっかり失われていた。 普通の友達として一緒に過ごすには、貴文は気遣いもできるしとても居心地が良い。 長野に住んでいた頃の幼なじみの拓ちゃんと少し感じが似てるしな……。 二人で連れ立ってアパートを出て、静流のバイト先に向かう。 人目を引く二人で歩くので、静流は人の目線が気になって落ち着かなかったが貴文は堂々としていた。 「静流って、見た目とは違うよね。クールで都会的に見えるのに、家庭的で庶民派だし」 「それは君も同じだろう。物語に出て来る王子様みたいな奴だと思ってたのに、凄く変わってるし」 「ふふっ。幻滅した?」 「いや。親しみが湧いた。王子様のままだとこんなに話せなかったし」 酔って迷惑はかけてしまったが、静流との距離が近くなって貴文は嬉しかった。 静流がこうして普通に話しかけてくれて、楽しくてつい静流のバイト先のビルの前まで一緒に来てしまっていた。
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