第1話

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そう思って、隣は居ないものと思って講義を受けていたのだが……。 近い。 この女子、やたら距離が近い。 僕のエリアに入り込んでやたら体を押し付けてくるんだが………。 授業に集中する静流に痺れを切らしたのか、隣の席の女子はぐいぐい体を押し付けてアピールし始めた。 せっかく隣の席をゲットしたのだ。 何としてでも静流をモノにする……その考えが伝わってきて、静流は鳥肌が立ってきた。 気持ち悪い……。 押し付けられたふにふにとした肉の感触も。 きつい香水の匂いも。 獲物を捕らえようとするぎらぎらとした闘志も。 逃げ出したい思いを必死で押さえて、静流はなんとか講義の時間は耐えることが出来た。 「ねぇ、北野君。お昼は一緒に……」 「失礼」 静流は手早く勉強道具を鞄に詰めると、逃げるように教室から立ち去った。 都会の人は男も女も怖い……。 取って食われるかと思った……。 こんな時は誰も来ない秘密の場所に行くに限る。 次の一コマは休講なので、静流は先日見つけた秘密の場所に向かった。 広いキャンバスの片隅に、植え込みがこんもり茂った場所がある。 隙間から茂みの中に入ると、中はぽっかりと開いていて秘密基地のようだった。 誰にも邪魔されずにここで本を読んだり昼寝をしたり、ここは静流の憩いの場所だったのだが………。
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