第2話

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「頼む!この取材に社運がかかってるんだ!助けてくれ!」 貴文と静流の前で、雅文はがばっと土下座をした。 大会社の副社長がここまでするのだ。 本当に大ピンチなのかもしれない。 「………分かったよ。でも、うちの家の問題に静流を巻き込まないでやってよ」 「ありがとう貴ちゃん!でも、2パターン着て欲しいから静流君にも頼みたいんだけど……」 「静流には関係ないことだろ?巻き込むな」 土下座をしたままの雅文が、うるうるした瞳で静流を見上げる。 本当に困っているみたいだし……ここで嫌だと言い張れるほど静流は強くない。 「本当に、洋服を着て立っているだけですか?」 「うん。お願いできる……かな?」 「………………分かりました」 本当は物凄く嫌だけど。 貴文も一緒なら、何とか頑張れるかもしれなと静流は自分を奮い立たせた。 「よし!そうと決まったら二人ともこっちに来て!」 薫が二人をぐいぐい引っ張って、副社長室の向かい側にある部屋に案内した。 ずらりと並べられた衣装から、手早く二着を手に取ると薫は貴文と静流にそれぞれ渡す。 「すぐに着替えて!着替え終わった方から髪とメイクするから」 言われた通り、静流は渡された衣装に着替える。黒を基調とした落ち着いたデザインの洋服に、奇抜な服じゃなくて良かったと静流は安堵した。 貴文は既に着替えて薫にスタイリングしてもらっていた。 貴文の衣装は白を基調としていて、なるほど、白と黒の対比を見せたかったから二人必要だったのだと静流は納得する。
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