第2話

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パシャパシャとカメラのフラッシュが眩しい。 だが、そのおかげで目が眩んで人の顔がよく見えなくなり静流はどんどん冷静になっていく。 僕は黙って立ってればいいんだ。 そう思って貴文を見ると、貴文は静流に柔らかく微笑みかけてくれた。 『えー、我社の新ブランドのコンセプトは……』 社長の説明の間、メディアは無名のモデル二人に釘付けだった。 並外れた容姿にスタイル、これだけのモデルなのに今まで表舞台で見かけたことは無い。 「nannoさんとこのモデル、二人ともめちゃくちゃ格好良いけど誰?」 「どの事務所に所属してるんだ……」 会場が二人を見てざわつくのを、雅文は嬉しそうに眺めていた。 静流をモデルにするのは昨日から考えていて、モデルがトラブルで来られないと言うのは真っ赤な嘘だった。 今日、清掃のシフトに静流が入っていることは確認していたし、万が一断られたら控えさせてあったモデルを使うつもりだったのだ。 だが、静流は押しに弱そうだったのできっと断らないと雅文は踏んでいた。 それに加えて……。 静流の横で余裕でポーズを取る弟の貴文に、雅文の笑いも止まらない。 弟は華があって絵になる。 貴文に以前から会社の顔になってもらうよう頼んでは断られていたのだ。 それが静流と一緒に一気に釣れるとは…。 これは運が向いてきたな……。 雅文の思惑通り、メディアへのお披露目は大成功に終わった。
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