第3話

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第3話

「二人とも今日はお疲れ様!」 お披露目会の後、再び副社長室に招かれた静流と貴文は、副社長室のソファに座ってお茶を飲んでいた。 「あれで大丈夫でしたか?特にポーズを取ったり笑ったりできませんでしたが」 「完璧だったよ!静流君は佇まいがクールビューティだから、下手に何もしない方が格好良い!貴文も完璧だったよ」 にこにこしながら雅文はデスクの引き出しから封筒を二つ取り出してきて、静流と貴文の前にそれぞれ置いた。 「これ、バイト代ね。本当に助かったよ。ありがとう」 バイト代が貰えるとは思わなかった。 ただ服を着て立っていただけなのに、お金なんて貰ってもいいんだろうか。 「静流、迷惑料だと思って貰っとけよ」 貴文がそう言って封筒を受け取ったので、静流も貴文に従って封筒を手に取った。 あれでいくら貰えたんだろう。 昨日のタクシー代くらい入ってたら助かるんだけど………。 「二人とも本当に素敵だったわ。これきりなんて勿体無いから、モデルデビューしたらいいじゃない」 「やだよ。俺は表に出るのは嫌なんだ」 「僕も、人に注目されるのはちょっと……」 欲が無いわねぇと薫に言われても、静流はモデルの仕事には全く興味が無かった。 今日はたまたまそんな感じの仕事を引き受けたが、これからの人生で二度と関わるような業界ではないだろう。
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