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「………スカウトだなんて、驚いたな」
「静流はスカウトくらいされたことあるでしょ?」
「うーん。基本的に知らない人が話しかけてきたら逃げるようにしてるから、スカウトなんて初めてだった」
意外にも静流がスカウトは初めてだと聞いて、頭に血が上っていた貴文は冷静になることができた。
「俺はよくスカウトされるんだ。兄さんにも…会社の専属モデルをやってと頼まれてるし……」
「貴文、格好良いもんな」
「でもそれって、俺が顔だけの男ってことだろう?俺の中身なんか、みんなどうでもいいんだよな……」
少し寂しそうに言う貴文を、静流は意外な気持ちで見ていた。
顔ばかり注目されてうんざりしていたのは自分だけではなかったのだ。
「貴文は………顔はいいけど変な奴だ」
「ははっ。何だよそれ。慰めてくれてるつもり?」
「変な奴だから安心するよ。君が普通の人間だって分かってさ」
貴文君は格好良いから。
貴文君ちはお金持ちだから。
今までは皆、俺の見かけや家など、俺の中身と関係ないところしか見てくれなかった。
それが当たり前になっていて、俺はいつも虚しい思いで生きてきたのに。
静流は俺の事を普通だと言った。
普通の人間だと。
見た目だけじゃなくて、中身も見てくれた上でそう言って貰えて、貴文は言葉が出なかった。
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