第3話

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「貴文、何が食べたい?」 貴文と静流はスーパーに寄って買い出しをすることにした。 貴文は嬉しそうに買い物かごを持ってスーパーをキョロキョロ見渡している。 「静流が作るものなら何でもいいよ」 「それだと決まらないだろ。和食とか洋食とかでいいから、ざっくりジャンルを指定してくれ」 「んー。じゃ、和食!」 静流は頷くと魚売り場に向かった。 じっくりと吟味した結果、ブリの切り身をチョイスする。 「ブリだ!魚なんか久しぶりだなぁ」 「君は普段何を食べてるんだ……」 「外食かコンビニの弁当かカップ麺かな」 貴文の食生活を聞いて静流は呆れてしまった。 貴文の親の会社で、父親と会った貴文が寂しそうに見えて……顔しか認めて貰えないという悩みも聞いて、何となく貴文のことが放っておけず食事に誘ってみたが………。 こんなに嬉しそうなら誘ってやって良かった。 「スーパーも滅多に来ないから楽しいな」 「何かデザートも買って帰るか」 「いいの?俺プリンがいい!」 「プリンでいいなら僕が作るよ」 卵と牛乳さえあればプリンなんて家で簡単に出来る。そう静流が提案すると、貴文はキラキラした目で静流のことを見ていた。 「手作りプリンなんて初めて……。どうしよう。すごく楽しみ」 「ただ、僕の家は食器がないんだよな。帰りに買って帰るか………」 「なら、俺の家が近いから俺の家においでよ。皿も調味料も揃ってるから」 料理をしない貴文だが、一人暮らしをする時に実家の家政婦が台所用品はフルセットで揃えてくれてある。 一度も使ってないので勿体なく思っていたところだ。
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