第1話

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「あれ?北野君もここに逃げてきたの?俺もちょっと避難してきちゃった」 「南野君……。君もここ知ってたのか…」 自分だけの秘密基地だと思っていた場所には先客が居て、それが静流の苦手とする貴文だったことに静流はショックを受けていた。 「この前女の子に追い回されてた時に、ここ見つけたんだ。秘密基地みたいで落ち着くよね」 「ああ……そうだね」 これはどうしたらいいのだろう。 せっかく避難してきたのに、貴文と一緒では避難にならないではないか。 でも、今ここから出て行ったら先程の肉食系女子に捕まるかもしれないし……。 「北野君、ここ座りなよ」 貴文は自分の隣に座るよう促してきた。 先程の女子よりは貴文の方がましだろう。 そう思った静流は覚悟を決めて貴文の隣に腰を下ろした。 「北野君も女の子から逃げてきたの?」 「まあ…そう」 「北野君、凄く綺麗な顔してるからモテるもんね」 君ほどじゃないよと思いながら静流はチラリと貴文の顔を見る。 貴文も静流のことを見ていたので、バッチリ目が合ってしまった。 「目元が涼しげで……本当に綺麗だね」 「そんなこと、ない。この顔……嫌いだ」 あまりにもうっとりとした顔で綺麗と言われて、静流はつい反論してしまった。 この顔のせいで目立ってしまうし、全く知らない人に告白されたり後を付けられたり……静流にとっていいことは一つもない。
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