第3話

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「本当か?なら、君の家にお邪魔しようか」 「そうしてよ。鍋とか一回も使ってないし、静流に使って貰えたら嬉しいよ」 買い物を終えて、静流は貴文の部屋に向かうことになったのだが………。 「……ここが君の家か?」 「うん。さ、入って」 お坊ちゃんとは言え同じ大学生なのだ。 きっと少しいいアパート程度の部屋なんだろうと思っていたのに、貴文に案内されたのは立派なマンションの一室だった。 オートロックのエントランスからエレベーターに乗り、案内された部屋はとても大学生の男子が一人で住むような部屋ではない。 「……………広いな」 「静流の部屋より少し広いかな。掃除が面倒くさくて引っ越したいんだ」 少し広いなんてレベルじゃない。 家族でだって住めそうな広い部屋に静流は圧倒された。 「確かに掃除してなさそうだが……どうして脱いだ洋服がリビングに散らかってるんだ?」 「洗濯機に入れるの忘れてた」 「空のペットボトルも出しっぱなしだしゴミも落ちてるし………料理より、まず掃除からだな」 せっかくのお洒落なマンションなのに、貴文の部屋は掃除好きの静流には我慢できないくらい散らかっていた。 静流は窓を大きく開けてパンと手を叩いた。 「さ、掃除するよ。君はまずゴミを片付けてくれ。僕は洗濯をする」 「なんか……ごめんね。俺が部屋に呼んだばっかりに……」 「はい、手を動かす!」 静流にビシッと指を差されて、貴文は慌てて散らかっていたゴミを片付け始めた。
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