第3話

8/23
前へ
/222ページ
次へ
全く………。 こんないい部屋をここまで散らかすなんて。 普段王子様然として全てが完璧に見えた貴文だが、こんなにズボラだとは思わなかった。 静流はそう思いながらテキパキと片付けて行く。 貴文が静流に指示されたとおりに、おとなしくゴミを纏めているところを見て静流は可笑しくなってきた。 都会人だと思ってずっと避けてきたが……貴文は知れば知るほど静流の抱いていたイメージと違っていた。 いつもの完璧そうな貴文より、こっちの方がずっといいな……。 洗濯機を回している間に掃除機をかけ、洗濯物を干すのは貴文に任せて静流は料理を始めた。 ピカピカのキッチンは、今までお湯くらいしか沸かしたことがなかったのだろう。 鍋もフライパンも新品。 調味料も各種揃っているが、どれも開栓されていなかった。 「最新式のオーブンまであるじゃないか!凄いな……何でも作れちゃうぞ」 調理家電も最新のもので揃えられており、静流はいつになく興奮していた。 こんな広いキッチンで、こんなに恵まれた設備があるのに貴文は何故料理をしないのかと不思議に思ってしまう。 「このオーブンなら……パンもピザも作れるしケーキも焼ける…」 こんなオーブンがあると知っていたら、今日はオーブンを使ったメニューも考えたのに………。 少し悔しい気がしながら静流は料理を進めた。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1482人が本棚に入れています
本棚に追加