第3話

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静流に料理を振舞ってもらって、食べるのが楽しく美味しいのが幸せだと思えるようになっている。 誰と一緒に食べるかも重要なのだなと貴文は思っていた。 「なんか……変なことを言って悪かったな。君の母親が亡くなっていたなんて知らなかったよ……」 「俺を産んだ時に死んだらしいよ。だから父親は昔から俺のことが嫌いなんだ。兄さんより出来も悪かったしね」 今日、社長室で見た父親と貴文のやり取りは、確かにあまり仲が良さそうには見えなかった。 貴文も色々抱えているのだなと静流は思って、自分の話もしてみようと携帯を取り出した。 「これ、僕の家族」 「あ、写真見せてくれるの?」 静流から差し出された携帯には家族写真が写っている。 両親に静流に双子の妹。 仲良さそうに写っているが、静流にあまり似ていない気がする。 「似てないだろ」 「えっと………うん」 「僕は養子なんだよ。両親は小さい頃に事故で亡くなってる」 驚く貴文に、静流は笑って見せた。 「でも、本当の家族みたいに仲良いよ。家族も相性ってあると思う。君も……きっとこれから仲の良い家庭を築いたらいい」 「静流………慰めてくれてるの?」 「君が泣きそうだからな」 静流は貴文の頭をくしゃくしゃっと撫でた。 貴文がどうしていつも笑っていて、他人から嫌われないように理想の王子様を演じているのか分かった気がする。 貴文は……寂しいんだ。
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