第3話

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「静流………そんなに優しくされると惚れちゃいそうだ」 「ふふっ……胃袋も掴んだみたいだしな」 静流は冗談だと思っているみたいだが、本当に惚れてしまいそうだ。 と言うか、既に好きだ。 かなり好き。 静流と話していると、素の自分も認めてもらえて本当に安心出来る。 「プリン冷めたと思うから持ってくる」 静流が立ち上がってキッチンに向かった。 その後ろ姿にさえ、貴文はドキドキしている。 俺はどうしてしまったんだろう。 実は俺、ホモだったのかな……。 「甘さを控えたから口に合うといいけど…」 「美味しそうだね」 好きだなんて静流に知られちゃ駄目だ。 静流に嫌われたくない。 友達として傍に居られるだけで十分だ。 静流への思いに蓋をして食べたプリンは、美味しいはずなのに少しだけ苦い味がした。 「じゃあ、僕は帰るよ」 「暗くなったからアパートの近くまで送るよ」 「大丈夫だって。女の子じゃないんだから」 その辺の女の子なんかより、静流の方が余程綺麗だから心配なんだよ……。 貴文はそう思っていた。 コンビニにも行きたいからと理由をつけて、貴文は静流を送るためマンションを出る。 「静流の料理美味しかったよ。ご馳走さまでした。ありがとうね」 「あんなのでよければ、また作るよ」 「本当に?普段大したもの食べてないから、たまにご馳走してくれたら有難いな。あ!材料費は勿論出すから」 「いいよ。実は……君の家のオーブンを使ってみたくてさ。またお邪魔してもいいか?」 喜んで! 貴文が元気よく返事をすると、静流は声を上げて笑った。
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