第3話

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翌日、大学に行くと静流は貴文の姿を探した。 今日は講義が被っているものがないのか、あんなに目立つ貴文がなかなか見つからない。 「昨日のバイト代のこと、相談したかったんだけどな……」 もしかしたら、貴文の封筒と間違っているのかもと思ったのだ。 兄から弟へのお小遣いで、多めに入れたというのは十分に考えられる。 貴文を見つけてそのことを話そうと思っていたのに、いつもは嫌でも目に入ってくる貴文が全然見つからずに静流は困っていた。 二限目が終わり、静流がキャンパス内を見渡していると貴文とよく一緒にいる同級生の姿が見えた。 確か……山田?山本?……山口だ! 「山口君」 「えっ!北の王子……じゃない、北野君。ど、どうしたの?」 静流から初めて話しかけられて、山口はぎょっとして固まってしまった。 昨日も思ったが、近くで見ると静流は恐ろしいほど綺麗だ……。 「今日、貴文来てるか?」 「あ、貴文……貴文ね。午後から来るって言ってたから、そろそろ来るんじゃないかな」 山口と静流が話していると、大学の正門から貴文がのんびりと歩いて来た。 貴文は静流の姿を見つけると、嬉しそうに手を挙げた。 「静流おはよう」 「貴文、俺も居るんだけど」 「あ、山口もおはよう」 「もう昼だろ。午前中はさぼったのか?」 静流が呆れ顔でそう言うと、貴文はぺろりと舌を出した。 昨夜……静流に対する気持ちを持て余して眠れなかったなんて、口が裂けても言えない。
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