第3話

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「そうだよ。大丈夫だから貰っておきなよ。俺も貰っておくし」 「貴文がそう言うなら……貰っておく」 モデルって儲かるんだな。 でも、もうあんな恥ずかしい思いをするのは真っ平だ。 「貴文は慣れてる感じだったね。モデルのバイトしたことあるの?」 「昔………モデル事務所でトレーニングさせられてたから…」 父親に無理矢理事務所に入れられて、真面目にレッスンを受けていたがデビュー目前で大学進学を理由に逃げ出したのだ。 『お前の外見には利用価値がある』 デビュー目前にそう言われて、俺は外見だけが父親の眼鏡に叶ってるんだなと……酷くガッカリしたのを覚えている。 兄さんのように後継者として頼りにされることもなく、自分の価値はこの顔だけだ。 少しでも家の役に立つと思ってモデルのレッスンを頑張ってはみたが、虚しくなって止めたのだ。 「なるほど。モデルの勉強をしていたから上手なんだな……」 「ああ。レッスンは無駄になったがな」 「無駄になんかなってないじゃないか。昨日の貴文は格好良かったぞ」 静流は真面目な顔で貴文にそう言った。 突っ立っているだけの自分と違って、優雅にポーズをとって立つ貴文はとても格好良く思えたからだ。 「………格好良かった?」 「ああ。堂々としていて、凄いなって思った。貴文が居たから僕も頑張れたんだ」 静流が素直な気持ちでそう言うと、貴文の胸がじわりと温かくなる。 誰に褒められるより静流に褒められるのが一番嬉しい。
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