第1話

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「そうなの?まあ、俺も自分の顔、あんまり好きじゃないなぁ」 貴文がそう言ったので静流は驚いた。 だって貴文は完璧な王子様じゃないか。 甘い顔立ちと華やかな雰囲気は貴文によく似合っている。 「意外だ。君は……完璧そうなのに」 「そんなことないよ。この顔のせいで女の子に追いかけ回されるじゃない。俺、実は女の子ってあんまり得意じゃないんだよね」 益々意外だ。 女子にもいつもスマートに対応しているじゃないか。 あれは演技だったのか? 「北野君みたいに凛として相手にしなければいいのに、優柔不断だからそれもできなくてさぁ」 「僕は……凛となんかしてない」 口下手で人見知りだから話せないだけだ。 後は目付きのキツさから、周りを拒絶するみたいに見えてしまっているだけで。 本当は都会の人が怖い、ただの小心者なのに。 「いつも背筋を伸ばして一人で居て、格好良いなって思ってたんだよ。友達になりたいなぁって」 「と、友達?僕と?」 「うん。良かったら友達になってくれない?迷惑………かな?」 ………確かに貴文と一緒に居たら、余計に目立つから迷惑だ。 だが、整った顔で上目遣いにお願いしてくる貴文を断る度胸もない。 仕方なく僕は友達になるのを了承すべく、こくりと頷いた。
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