第1話

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「良かった!断られるかと思った!」 この状況じゃなかったら多分断っていたよと思ったが、さすがにそれは失礼なので顔には出さない。 僕なんかと友達になれて、そんなに嬉しいなんて貴文は変な奴だと思う。 「早速だけど連絡先交換しようよ」 貴文はいそいそと携帯を取り出して、僕にも出すように促してきた。 半ば強引に連絡先を交換すると、貴文は満足そうに満面の笑みを見せた。 「ね、北野君、静流って言うんでしょ?南野と北野じゃ呼びづらいからお互い名前で呼ぼうよ。俺の事は貴文でいいから」 さすがリア充都会人は、すぐに名前で呼んでくるんだな………。 こんな華やかな相手を馴れ馴れしく名前で呼んでもいいのだろうか。 「静流、俺の事呼んでみて?」 「…………呼ばないと駄目なのか?」 「うん。さ、呼んでみて呼んでみて」 「たか、ふみ………」 きっと呼ぶまで許してくれないのだろうと、思い切って呼んでみたが……。 人見知りの僕にはかなり高いハードルだった。ただ名前を呼んだだけなのに、緊張しすぎて疲れてしまった。 「うん、いいね。静流、これからよろしくね」 「あ、ああ……。よろしく……」 完全に貴文のペースに巻き込まれている。 これなら肉食系女子に捕まっていた方が良かったのかと考えたが、それよりはこの状況の方がましな気がする。
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