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第一話 何気ない朝のやり取りだからこそ大切
いつもの時間に目が覚める。
まだ寝ていたいと身体は訴えているが、今日は授業がある。
俺はベットからおきあがり、洗面台へと向かう。
一人暮らしをしてもう2年が立つが部屋の狭さがつらい。
寝起きで視界が定まっていない中、何とか洗面台につく。
自分の姿を鏡を見て、お前は誰だとか言うと今は精神崩壊しかねないな。
蛇口をひねり冷たい水で顔を洗う。
少しスッキリした。
俺はそのままキッチンスペースに行き、電気ポットに水を入れてから電源を入れる。
部屋に戻り日課のニュースでもと思いテレビ電源を入れる。
そのまま洗面台へとまた戻り歯を磨く。
歯を磨きながらテレビから聞こえる音を聞く。
『本日また、○○市にて身体の一部がない……』
最近、いやずっとか世界は当たり前のように狂気を孕んでいる。
この類いの殺人事件なんて、割りと当たり前のようにおこっている、末期だな。
何て聞き流していると口から歯磨き粉が垂れてくる。
口を洗浄していると今度は部屋のチャイムがなる。
あいつか。
この時間に来る人なんて決まっている。
俺は少し待たせても構わないと思っていると、チャイムを連打しはじめてきた。
朝からこれはこたえる、心底めんどくさいと思いながら俺はドアのスコープを覗くと、やはりいた。
黒髪のストレートで顔は整っている。
スコープごしではあるが本人を知っているのでスタイルもいい。
正直好みではあるのだが手を出したいとは思わない。
知っている人物なのでドアを開ける。
「遅い!一体どれだけ待たせるのだ!」
開口一番がこれだ、要は美人だが性格がそこそこ残念なのだ。
「そして、外は暑い!さっさと家に入らせろ」
俺はげんなりしながら見る。
「何だその顔は?」
「イケメンで申し訳ないな」
「ありえない、せいぜい少し一般受けする程度の普通の顔だ」
この切り返しだ、まぁ割と物事をハッキリ言うタイプなので俺は気が楽だが、一般的にはあまり受けないように感じる。
「お前ホントに美人なのに性格があれだよな」
直接的な言い方をしないでいたがそれはそれで言われた本人は怪訝そうな顔で俺を凝視する。
「君が私の事を誉めるとは気味が悪いな」
誉めてない、むしろ軽くけなしたよ。
恐らく美人と言う部分しか聞いてないなコイツ。
「そうだ!誉める前に家に入らせろ、流石に荷物が重すぎる」
俺はいまから大学に行くんだけど、コイツも同じ授業とってたよな。
もしかして忘れてるのか?
「おい、聞いてるのか?カナタ」
「聞いてるよ、家に入るのはいいが今日はお互いに授業あるぞ?」
アキは首を右に軽くかしげながら俺を見る。
そして一度目を閉じる、おそらくアキの頭の中はここ最近の授業がある日を検索しているのだろう。
しばらく待っていると、突然目を開く。
「おいおいおい、ホントに今日授業とってるじゃないか」
「だから言ったろうに、お前ほとんど俺と同じ授業とってるんだから」
アキは頭を抱えている、物理的にも抱えている。
「わ、私が買ったこのゲーミングノートは?」
知らんよ、えらい無駄にデカイ鞄を持ってきてると思っていたが、まさかのノートPCを持参しているとは。
「何でそんなもん持ってきたんだよ?」
「カナタとFPSするためだろ」
予想外のような、予想内のような返答が返ってくる。
この3ヶ月ほど全人類は家に引きこもることになったのだが、割と考えるのも億劫なので考えないでおこう。
そのさいにアキは俺の家で一緒に暮らすことになった。
まぜならその3ヶ月間のはじめの方にアキの家の近くで、バラバラ殺人事件があったからだ。
その時のアキは珍しく、しおらしくて可愛かったのを今でも憶えている。
『その、なんだ、トラウマが発動しそうで、やっと今の生活に慣れてきたんだ』
『だから、無茶なお願いなのはわかっているんだ、そのカナタの家に当分の間いさせてほしい!』
こんなことを女性から言われたら嫌だとは言えないし、見てくれだけは美人なのだ。
あわよくばもあればと思い俺は承諾したのだが、残念ながらその気にはならなかった。
弱っているように感じる人の心に入り込むのは卑怯だとも思ったし。
「おい!カナタ!とりあえずノートはお前の家に置いておく、流石にこれを持って大学に行くのはつらい」
そして現実に戻される、目の前にいるのは美人だが可愛げのない女性であることに。
俺は大きくため息をだしアキを残念なものを見るような目で見る。
「何だその顔は、兎に角重いのだから仕方がないだろ?」
「持ってきたのは自己責任だ、だが壊れたとかいって泣きつかれるのも嫌だからとりあえずそこに置いとけ」
と俺は玄関すぐの廊下を指差す。
「泣きはしないが、暴れまわる」
「いちいち上を言う」
何故か勝ち誇った顔をしてきやがる、腹が立つが顔がいいからゆるそう。
俺はアキに会って何回色々と許してきたのだろうか?
何て野暮なことを考える前に大学に行かなくてはならない。
「ほれ、さっさとその鞄よこせ」
「言われなくても」
俺はアキが手に持っていた大きな鞄を受け取り廊下に置く。
「あんまり雑に扱わないでくれよ」
「扱ってないよ、ほらさっさと行くぞ」
「うむ」
何を偉そうに胸をはってんだよ、残念ながらそんなに大きくはないんだよ。
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