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登校とは辛いもので
俺とアキは全力で走っていた。
結局電車に乗ったのはかなりギリギリになってしまう、そこから大学への道は走らないと間に合わない時間になっていた。
お互いに体力がある方ではないので息は絶え絶えで、俺から見たアキは頼むからもう楽にしてくれと言わんばかりの表情をしていた。
俺も恐らくだが同じ顔をしているに違いないのだが、残念ながら自分の表情は見ることはできない。
「ぜぇひゅー、カナタ私はもう駄目だ」
白目を向けてやがる、美人なのだからやめろよ。
「お前な…そんな顔をするなよ勿体ないだろ」
「よくこんな状況で人を誉めることができるな」
「こんな時だからだよ、涼しい顔しながら走れよ」
「君も相当ヤバい顔をしているぞ」
「俺はいいんだよ、そんないい顔をじゃないから」
前しか見れない為お互いに表情を見ることはできないが、今のアキの表情ぐらいは予想できる。
にやけているに違いない。
ない体力を振り絞りアキの方を見ると、にやけていた。
「喜びすぎだ、顔にでてるぞ」
「カナタが誉めるからだ」
声まで上ずっている、普段誉めていないから余程嬉しいんだろうな。
「アキ、俺はもう無理だ」
「な、何がだ?」
何故か警戒をしてい雰囲気をだす。
「先に行って俺の代わりに」
「嫌だぞ」
即答かよ、付き合いがそこそこ長いせいだな。
「むしろカナタが私の代わりに」
全く同じ事を言ってやる。
「嫌だぞ」
そんな不毛なやり取りをしていると大学の校舎が見えてきた。
「後少しだ、お互い最後の力を振り絞るぞ」
「何故朝イチからの授業を取ったりしたのだ」
「お前だよ!」
「え?」
「マジか」
何故覚えていない、この朝イチからの授業を取ろうと言ってきたのはアキの方である。
理由は簡単だ、最低限の生活リズムは維持しておこうと、いずれ社会人になったさいに昼夜逆転してしまうと目も当てられないことになってしまいそうだった。
二人ともゲームをよくする方であった為に夜中もずっと続けてしまう。
だから朝イチからの授業を優先して受ければ、嫌でも生活リズムは崩さないだろうと言ったのだ。
だが悲しきかな、今の全力で走っている俺では言うことができない。
「最低限の生活リズムだよ」
その言葉を聞いて思い出したのかアキは納得したような顔をしていた。
「そうだった、言ったな」
本当に、本当に勘弁してほしい。
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