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穴
雨がふる。
ザアザアと。
ずっと、やまない雨が。
ここ何日間も。
僕はただうけ続ける。
この雨をひたすら。
この穴のなかで。
ただひたすら。
止まらない。
仰向けで。
力なく。
辛い。
雨は、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく。
僕の体を、穿ち続ける。
この穴に落ちた時からだろうか。
体が、一切動かない。
痛みも寒さも感じない。
動くのは、この目だけ。
目だけ動くことも、恨めしくなるほど、
なにも変わらない。
雨は、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく。
僕の体を穿ち続ける。
いったい、僕はいつからこうしているのだろうか。
記憶をたどっても、いくらたどっても思い出すのは、この雨、雨、雨。
最後に食べたのは、いつだっけ。
誰かと話したのは、いつだっけ。
僕はいったい、だれだっけ。
雨は、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく、絶え間なく。
僕の体を。
僕は、いったい。
一瞬の閃光がはしる。
それとともに、ひとつの顔を思い出す。
ずっと仲良くしていた、親友のヒトシくん。
ーーを見るような顔で。
視界の端から、焦げていく。
ジリジリジリジリジリジリジリジリ
ボクハ、イッタイ。
ナンダッタンダロウ。
「おーい、終わったか?」
「今終わりましたよー」
「おつかれさん。にしてもいつ見ても気味悪いよな、こいつらの処分」
「そうっすね!バカだよなあ、自我なんて芽生えるから」
「本当にそう。リサイクルするこっちの身にもなってくれよ」
そういって、機械たちは笑う。
あなたは、人の怨みを信じますか?
では、機械の怨みは?
物に宿る強い意識は?
意識とは人のものですか?
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