サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス

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「完全形の卵の化石、24個あったよな」 「いえ、23個ですよ」 「確か24個あったはずだが」 「僕がさっき数え直したら23個でした」 「そうか。じゃあ、データ入力して、と。……ケースに2重に鍵かけて、資料庫に閉まってくれ。あ、資料庫にも鍵かけるんだぞ。明日は大事な報道発表だからな」 「はい」 ひとつの卵の化石が、研究室の隅っこの、冷蔵庫の裏側に転がっていた。1億1千万年ぶりに浴びた思いがけない熱で、卵は孵化しはじめた。 ぱりぱり、ぱりん。 割れ目から顔を出したのは、サブティリオリサス・ヒョウゴエンシスの赤ん坊だった。 赤ん坊はしばらくじっとしていたが、そのうち、腹が減ってきた。かさかさ。音のする方向を見ると、小さなゴキブリが走っている。 赤ん坊――ヒョウゴは本能的に、舌を出してゴキブリをペロリと呑み込んだ。 ひと晩中、研究室の床を歩き回り、ヒョウゴはゴキブリを2匹、蜘蛛の子供を1匹食べた。
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