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6,7歳だろうか。こちらを笑いながら見ている。
「お、おばけ…。」思わず声が出た。
「お前、よく見ろよ、おれは足もあるし死んじゃいないよ」
少年は腹を抱えて笑い出した。
「え!だって……。」
私はもう一度少年を見た。確かに足はあるし透けてもいない。
「あ、この血のこと?落ちた時に擦りむいたんだ。結構痛いんだよ。」そう言って少年は笑った。
「そこにいると濡れちゃうから、とりあえずこっちにおいで」
そう言って、少年をバス停の屋根の下に呼んだ。
急いでタオルで止血をした。
幸いかすり傷程度だった。
「はぁ、私は美樹よ。きみの名前は?どこに住んでるの?」
「ぼくは、太郎。山の上に住んでるよ。」
「え!山の上って、結構と距離あるじゃない。一人で来たの?」
「うん、お父さんたちは仕事で今日遅くなるんだ。暇だったから遊んでたら…ここまできちゃった。」
少年は寂しそうな顔をした。
このまま怪我をした少年を雨の中、置き去りにはできない。
それに、山のふもとの集落に長く住んでいるおばあさんなら、この子のことも知ってるかもしれない。
「ねえ、太郎君。私のおばあちゃんの家がここから15分ぐらい歩いたところにあるから、天気が良くなるまでうちにおいでよ。
濡れたままここにいたら風邪ひいちゃうよ。」
「ぼく、雨なんてへっちゃらだよ。」
「もー。そんなこと言わないで、一緒に行こう。晴れたら家まで送ってあげるから。」
その時また雷がゴロゴロとなりだした。
「そう言って、お前雷怖くて一人で帰れないんだろ。
しょうがない。ぼくがを家まで送ってあげよう。」
「怖くなんてないわよ」
ダーン!!
また近くで雷が落ちたようだ。
私は足がすくんでしまった。
それを見て太郎は、背中を向けてしゃがんだ。
「怖くて歩けないんだろ、おんぶしてやるよ。大丈夫、僕は力持ちだから。」
それを見て私は笑ってしまった。
さすがに、怪我をしている少年におんぶして歩くわけにはいかない。
「もう大丈夫よ。太郎君はやさしいのね、ありがとう。」
「なら、その荷物もってやるよ。」
そう言って、私の紙袋を持っておばあさんの家に歩き出した。
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