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雨の中
「今バス停着いたところ!
でも雨がひどくて家に着くのはもう少しかかりそう。
え?バームクーヘン?買ってきてるよ!それじゃあ、おばあちゃん後でね。」
おばあちゃんはいつも突然電話をかけてくる。
今回は、久しぶりに顔を見たいからバームクーヘンを持って顔を店にこいと連絡があった。
きっと何かのテレビでスイーツ特集でもやってたのだろう。
山のふもとにある小さな集落にすんでいるおばあさんの家は、バスの本数も少なく不便だが私の家からバスで1時間半ほどで着く。
この山は小さいころ遊び場だった。自然も豊で山の頂上には霧がかかることも多く神秘的だ。今では登山やハイキング好きな人が遊びに来る。
こんな日に限って、雨だ。
空はゴロゴロと音を立てている。
バスから降りると、一層雨脚が強くなってきた。
バス停の椅子にリュックを置いて折り畳み傘を探す。
こんな日の折り畳み傘はとても頼りない。
するとその時、チカっと目の前が光り稲妻が走った。
ダーン!!
大きな音が鳴り響いた。
どうやら近くに落ちたようだ。
私は、雷が大嫌いだ。
小さい頃、山で遊んでいるときに迷子になった。そのうち雨が降り雷がなり、とても怖かった思い出が、私の雷嫌いを作ったのだろう。
空はまだゴロゴロとうなり声をあげている。
「また雷が落ちてきそう…。勘弁してほしいわ。」
ここは、高い木が多くよく雷が落ちる地域だ。
わたしは、雷が落ち着くまでバス停で待つことにした。
また、チカっと目の前が光稲妻が走った。
「ダーン!!」
さっきより近いようだった。
私は驚いて耳をふさいだ。
「おまえ、大人になっても雷が怖いのかよ!」
「わ!!」私は急に声をかけられて驚き尻もちをついた。
恐る恐る声のする方を見るとそこには雨に打たれて泥だらけの少年が立っていた。
その少年は額と膝から血を流していた。
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