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父さんは宇宙人
家に帰ると、宇宙人がいた。
シルバーのぴちぴちタイツを身に付け、逆三角形の顔を被っている。目の所は黒三角のメッシュになっており、身長は大人ぐらい。
小学四年生のぼくでも、これは人が変装しているな、と分かる完成度の低い宇宙人だ。
「トモ君、初めまして。今日から“お父さん”させてもらいます」
「え?」
びっくりして、肩に掛けていた水筒を落としてしまった。
「何、今の音? トモ、水筒壊れたんじゃない?」
母さんが玄関に来て、ぼくを見た。
水筒の心配より、混乱しているぼくの心配をしてほしい。
目の前の宇宙人は、どう見ても人間が仮装しているようにしか見えない。
「母さん、この人誰?」
「この人? ああ、自己紹介してくれたでしょう? この人は宇宙人のコスモさん。トモのお父さんよ」
「コスモさん、父さん……」
「トモ君、よろしく」
よろしくって……。
母さんは、これは決定事項です、と言う顔でぼくを見た。
「じゃあ、そう言う事だから。トモ、手を洗って来なさい」
ぼくはしぶしぶ洗面所に向かった。
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