父さんは宇宙人

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*  ぼくには苦手な事がたくさんある。  臆病だから言いたいこともはっきり言えないし、すぐに緊張してしまう。勉強は得意だけど、発表は苦手だから授業でもうまく活躍できない。特に運動が苦手で、自転車はまだ補助輪をつけて乗っている。これはクラスでぼくだけだ。逆上がりもできないし、登り棒も登れない。縄跳びも前跳びしか出来ない。 クラスでぼくは軽くバカにされていた。 特にカケルは出来ないぼくを見てくすくすと笑う嫌なやつだった。  昼休みの遊びでも、ぼくの走っている姿が変だと笑い、逆上がりが出来ないと笑い、登り棒を見上げていると、棒の上から見下ろして笑っていた。 そんな時はむしょうに悔しくて情けなくて、出来ない自分もバカにするカケルも嫌いになりそうだった。 「今日、学校が終わったら、自転車で公園に行こうよ」 「いいね、マンションの公園のジャングルジム大っきいもんね」 「トモも行く?」 「ぼくは……」 みんながかっこよく自転車を乗りこなす中、自分だけガラガラと補助輪をつけて、みんなの後を走る姿を思い浮かべると、悲しくなった。 「ぼくは自転車の調子が悪いから、歩いて行くよ」 「じゃあ、公園で待ち合わせよう」  帰る前にお知らせプリントがクラスに配られた。  夏休み前の来月、自転車検定があるらしい。七月七日。ぼくの誕生日だった。なんたる悲劇。残念なお知らせだ。  プリントには補助輪は小学三年生まで、四年生からは外して自転車検定を行います、とある。 ーーー公園に行って遊んでる場合じゃない。 ぼくは公園で遊ぶのは断った。 「なんで? 一緒に遊ぼう」  仲の良いヨウタが不思議そうに見ていた。けど、補助輪なしで自転車にすいすい乗れる彼に、ぼくの気持ちは分かりっこない。  来月の自転車検定までに補助輪なしで自転車に乗れないと、またカケルにバカにされる。 「今日はやめとく。また今度遊ぼう」 ヨウタにそう言って、家に急いで帰った。 頭の中は自転車の事でいっぱいだった。
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