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家に帰るとコスモさんはまだいた。
「ただいま」
「おかえり、トモ君。今日も宿題一緒にしようか」
ぼくはランドセルから自転車検定のプリントを取り出した。
「母さん居る?」
「ユミさん? 居るよ」
コスモさんは母さんをユミさんと呼んでいた。
「母さん、これ」ぼくはプリントを見せた。
「ぼくの誕生日に自転車検定があるんだ。だから、自転車を補助輪なしで乗れないと笑われちゃう。自転車の練習を一緒にして」
母さんはプリントを受け取って、コスモさんを見た。
「コスモさんに教えてもらいなさい」
「え? コスモさんに?」
ぼくは、うそでしょ、と続けそうになった。宇宙人の仮装をしたあやしい人と一緒に練習は出来ない。
「よし、父さんと一緒に公園に行こう」
「いや、でも、……そのかぶり物は脱ぐよね?」
「何言ってるの? コスモさんはこれが顔だって言ってるでしょ?」
母さんの言う事は絶対だ。
腕を組み、眉を寄せてぼくを見ている。
「よし、行こう。大丈夫だ、心配しなくてもすぐに乗れるようになるさ」
自転車の練習の前に大きな心配があるのだけど、この2人に言っても通用しなさそうだった。
残念なお知らせは、残念な方向にどんどん進んでいく。
仕方なく自転車を持って、近くの公園に向かった。
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