T君は忌引きでお休みです

「T君は忌引きでお休みです」
今日はテストの日だったので、思わずクラスの皆は言いました。
「いいよなT君。忌引きって欠席にならないから」
翌日、元気に登校してきたT君が言いました。
「親戚が死んだんだ。でも、会ったことないおじさんだよ」
忌引きでいなかったT君だけ、明日はテストです。ところが次の日もT君は来ませんでした。忌引きでした。
「親戚のおばさんが後追い自殺をしちゃったんだ」
クラスの皆は心の中でT君を羨ましく思っていました。
しかし、ここで一人のクラスメイトが言いました。
「忌引きは嘘で、ズル休みじゃないの？」
途端にクラスは皆「ズル休み」「嘘つき」と騒ぎだしました。
T君は怒りました。
「僕は嘘つきじゃない！」
でももう誰もT君の言葉なんか聴きません。
次の日、T君のテストの日です。ところが、やはりT君は朝のチャイムが鳴っても姿を見せません。
「T君は今日も忌引きかな？」
クラスの皆がひそひそ話をして言います。その内、先生がクラスにやって来ました。
「T君は来ません」
クラスの皆がニヤニヤと笑います。
「T君は忌引きですか？」
先生は少し困ったように答えました。
「T君は逮捕されました。お父さんのお弁当に毒を入れたので」
クラスの皆はポカーンと口を開けて言いました。
「T君は忌引きになるところだったんだ」