6人が本棚に入れています
本棚に追加
仕事
俺は学校に行っていない。
なので、恥ずかしながらもこの世界のヤツらが当たり前のように使える魔法を、ごくわずかしか使えない。
文字だって2年前、教えて貰ってやっと少し読めるようになれたのだ。
それまで政府からの依頼や墓作りの依頼はショウに読んでもらっていた。
俺は墓作りをすることを条件に生活しているのだから。
村の労働力のありそうな若者はみな徴兵され、女共も大きな町へ働きに出ているからか、この街の人口の大半は子供や老人、病人、反抗軍隊などである。
反抗軍隊とは、国の政治に従えないと判断した軍人達が死んだフリして逃げてきた、独裁者討伐と世界平和を目的として作られた部隊である。
10数年前、たくさんの人々が何も知らずに徴兵されていってしまったのだ。
神の乱心を止めるためとホラを吹いた総統によって。
それを逃れたり、傷を負ったりしたもの達の集まり。
通称、「反軍」。
部隊は総員60人ほど。
でも、戦闘力だけでなく、絆や協力する力が国の軍隊より高いと私的に思う。
まあ、なんでこんな詳しいかって、この村は反抗軍隊の味方、つまり「反総統派」だからである。
もちろん反抗軍隊の存在も、この村の意向も知られてしまえば反総統派とバレるから村外秘なんだがな。
俺はヒガンに昼まで砂遊びでもしててくれと小さなスコップやバケツを手渡し、安全な所へ行かせた。
何かあればすぐわかる距離ではあるし、何かあれば呼びなさいと言ってあるから大丈夫だろう。
ヒガンは上機嫌で砂の山を作っている。
俺はと言うと、今朝届いた死体を洗い、棺桶に入れて埋めていった。
一日に届く死体は多い日で100体。
でも最近は戦場である西の方で戦線が停滞しているらしく、死体がない日もざらにある。
まあ、それはそれでありがたいな。
ちなみに今日は2体だけだった。
一体は黒髪でガタイのいい40くらいの男で銃の暴発で死んだらしい。
手は欠損し、顔には穴が空いていた。
もう一体は白髪の女で、敵の地雷にかかったらしく、足が無かった。
俺は見飽きた死体を水桶に入れて洗い、木棺に入れて、墓穴を掘った。
俺の元に来る死体は、皆遺族からの埋葬を許可されている。
2体目の死体を埋葬し終えた時に昼になった。
今回の死体はあまり汚れていなかったし、昨日雨が降っていたから土が湿っていて掘りやすかった。それに体力も人並みにはある。
俺は砂遊びをするヒガンに声をかけて、町で買ってきたサンドウィッチを二人で食べた。
たまごとハムが挟まっている。
ヒガンはそれを両手で持って、美味しそうに頬張っている。
こんな可愛いのに、将来の詐欺師候補みたいな性格してるなんてなぁ、、、。
「リュウち、おいしーね!!」
、、、かわいいな。
そんなことを考えながら食べ終え、街へ買い出しに行くことにした。
夕飯の材料を買わなくては。
だが、ショウはまだ学校だしヒガンを置いていくわけには行かないので、仕方なくヒガンを連れて店がたち並ぶエリアへいった。
最初のコメントを投稿しよう!