止まぬ雨に

3/8
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 自分の腕を見るとカーボン樹脂が主な義手の炭素繊維が、まるで経年劣化の如くボロボロと皮膚の部分が剥がれ落ちるのが見えた。 「コイツ等と同じか、うどんこ病まで出ちゃあ簡単には戻らないだろうな」  崩壊した作物の隙間には、幾つかの苗として姿形を残している物も存在している。しかし、男が選別した後の残りはその殆どが、この長雨で根が腐るか病気になっているものが殆どであった。  その傷んだ作物と。自分の腕の長雨による痛みが重なる様であった。 「さて、動ける者は取りあえず仕事をしますか」  男は立ち上がると、義手の発熱で雨にあたった腕から蒸気が上がっていたが気にした風もなく、作物の種を保存している倉庫に向かった。 「あった。雨が止んでも土を肥やして作物が取れるまでどれだけ掛かるか、向こうの倉庫の方に予備のプランターが有ったな」  作物と言っても光に当てて育てるものばかりでは無い。だからこそ男にはまだすべき仕事が有った。種の入った工具入れの様なボックスが、水に濡れない様に抱えたまま倉庫に向かった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!