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その日は突然やってきた。
「今日から歩のお父さんになる龍樹さんだっ!」
俺の名前は山城歩。高校2年生。
母さんは病気で、俺が中学生に上がったときに亡くなった。もっと余命は短かったけど、俺の学ラン姿を見るまで死ねないとか騒いで、入学式は無理やり車椅子で出席してくれた。校門の所で写真をとれて、俺も親父も、みんな嬉しくて、泣きながら笑っていた。
その数週間後、亡くなった時はやっぱり悲しかったけど、入学式まで頑張ってくれた姿を見て、そこまで悲観的にならなかった。
ありがとう、頑張って戦ってくれて。
あとは天国から見守っててね、そんな感じ。
というわけで5年前から親父と2人暮らしをやってるわけだ。親父はデザイナーとして仕事を持っており、母さんが逝く前から仕事は家でやっている。
だから俺は家事とかしないと!っていうわけでもなく、ありがたく高校生活を満喫している。
で、だ。
今日は土曜日なんだけど、朝はやくから親父でかけるって言ってて。なのに歩くんは家にいててね、すぐ帰るから、ね?ね?とかテンション高かったわけ。
なんかサプライズでも企んでるな、と思って、
わかったわかった、なんか昼飯作っておくわーなんて気楽に言ってたわけよ。
そんで今11時なんだけどさ、
親父が帰ってきたと思えば、冒頭のセリフよ。
まずな、母さんは死んだが親父は死んでない。
親父は目の前にいる。
親父からお父さんになるらしい龍樹さん?を紹介された
サプライズ、、、というかドッキリ?なのか?
理解が追いつかなくて驚くも何もできないとはこういうことなんだな…ははは。
「親父、わかったから冗談はそのへんで。昼用にパスタ作ろうと思って用意してたんだけど食べるよね?龍樹さん?も食べる?」
「歩くーーーん、そんな冗談パパ言わないよーーーー!一応ね、シリアスな場面なの、お昼はパスタ食べたい!龍樹さんの分も!ねね、聞いて聞いてよー!」
…そう、分かるよ言いたいこと。
もうどこから説明したらいいのか。
親父と母さんは同い年で、若くして結婚した。
母さんは大学卒業した年に俺を生んだから、親父は今年40歳。若い、とは息子ながら思う。
実年齢が言われるのもそうだが、見た目と中身はアラサーと言っても不思議じゃない。実際親父と買い物に行くと、お兄さんですか?兄弟ですか?って言われることもあるもんだ。
中身なんて、同級生と絡んでる時のようだ。
経済的には年相応の収入を得ているらしいが、甘えてくるし、口調も声も20代のまんまって感じ。お前は彼女か!と何回突っ込んだことがあるだろうか。
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