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ヒト皮むけた
「今日はお母さん、一緒に入らないからね」
夕食のあと、お母さんは言った。
「お隣のツバサくんは小4なのに、ひとりでお風呂に入れるらしいわ」
小学6年生になった今も、ぼくはお母さんとお風呂に入っている。
「いい加減成長しなさい」
それっきり、ぼくが必死にお願いをしても聞いてはくれなかった。
「ただいまー」
泣きかけたとき、玄関から声がした。
お父さんが早く帰るなんて珍しい。
お母さんが出迎えに行く。
ぼくは閃いた。
お母さんたちに気づかれないように、お風呂場へ急ぐ。
脱いだ服をかごには入れず、見つかりにくい場所へ隠した。
電気を消したままお風呂につかる。
怖いけど、少しの辛抱だ。
だって――ほら!
すぐに電気がついた。
ジャラッという金属音は、お父さんが腕時計を外す音。
ドアに映るのは、ベルトを外すお父さんの影。
ズボンを脱いで、上着も脱ぎ終わる。
先にぼくが入っているのを見たら、驚くだろうなぁ。
パチン。
ゴムが千切れるような音。
お父さんが、またズボンを脱いでいた。
ベリッ、ベリベリッ。
今度はガムテープをはがすような音。
脱ぐものなんて、ないはずなのに……。
静かに開くドアの隙間から、赤い腕が見えた。
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