アルバン・ヘルツに花束を

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 てんで自己本位なエッセイなのに皆様、スターや本棚追加、スタンプありがとうございます。大変嬉しいです。  主人公が決まって、其処まで初めて19世紀の傘がどんなものだったかを調べました。もちろんビニール傘なんざ有る訳無し、『傘の歴史』なる本を借りて必死に勉強しました。令嬢が持っていた宝石付きの陶器製傘や、ヘルツ警部が事情聴取で訪れた傘屋のマイスターの師匠の存在はその本で知りました。妄コン『傘』には他にも恋愛ものとホラーものを描きましたが、文献を参照してまで書いたのは『壊れた傘は歌わない』だけでした。  歴史物を書く時は誰でも意識していると思いますが、当時はどんなものが有ったか、逆はどんなものが無かったのか、又は今あるものは当時はこんな形で実に不完全だった……とかかなり調べて気をつけて書きました。「フィクションなんだから少しぐらいは良いでしょ……」という意見はミステリーでは通用しない。何故ならミステリーは現実的なものだから。それ以前にその時代に存在しないものをトリックに利用してしまったらまずいでしょ! 話が破綻する!  この問題において1番難しいのは会話ですよね。私には気に入っている歴史漫画があって舞台は平安時代初期なんですが(作品バレるかな……エブリスタ作品では全然無いんですが)、其の登場人物が「さぼっている」と言う場面があります。これは許せるか、許せないか。 「さぼる」ないし「サボる」は皆さんもよく知っている通り、フランス語の「サボタージュ」からきて、その起源はフランスの木靴(sabot)です。木靴を履いたら仕事の効率が落ちたとか、それで機械をぶっ壊したからとか複数説あるようですが、もし800年代のフランスに木靴が無かったら、そして壊す機械が無かったら「サボタージュ」と言う言葉は生まれないわけで、本来なら存在するはずの無い言葉を使って会話をしている可能性が有ると分かったら……許せるか、許せないか。そう言うことです。  他にも明らかに外来語が出て来て、着ている服や制度等に関してはかなり時代考証が出来ていた漫画だけに意外だったのですが、よくよく考えると平安時代の初期は国風文化など無く、何から何まで唐の影響が強かったので言葉まで当時のものにしてしまうと何を話しているのか全く分からない可能性が高いのです。そもそも何気なく出て来た日本語も生まれたのは鎌倉時代だったり、江戸時代だった、なんてこともあったのでそうなると会話においては忠実に再現するのはもう不可能です。そもそも時代が違うだけでものすごく遠く感じるし。なので現代の私たちにも親しみが持てるように言葉を選ぶのはありなのかなって。……ってすごく話が逸れたな。要するには上の問題の私の答えは「許せる。ただし限度がある。明らかに外来語はまずい」です。確実に無いと分かるからです。 『壊れた傘は歌わない』はその点を頭に入れて、明らかにその時代に無い固有名詞を会話は勿論のこと、比喩表現でも絶対に使わないように注意して書きました。書きながら時代小説家って凄いな……と思いました。  
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