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次の日から乃愛は屋上に姿を表さなかった。
乃愛と最後に会ってからもう3日になる。
テレビでは明日には隕石が衝突すると
アナウンサーが話している。
「皆さん、今までご覧いただきありがとうございました。この放送も本日で最後になるでしょう。
どうか最期の時を大切の人とお過ごし下さい。」
アナウンサーは最後の挨拶を終えると深々と頭を下げた。
その時、テレビの向こうではバタバタと何やら騒がしくなり始めた。アナウンサーも困惑した表情を
隠しきれていない。
「こ、ここで臨時ニュースです。」
アナウンサーは動揺しながらも
スタッフに渡された紙を読み上げる。
「連日お伝えしてきました巨大隕石についてです。
地球に接近していた巨大隕石が突如大爆発を起こし
消失しました。繰り返します、巨大隕石が消失した模様です。」
俊樹は慌てて部屋を飛び出し屋上へ向かった。
なんとなく乃愛が屋上にいる気がした。
屋上の扉を勢いよく開くと
一面の星空が目に飛び込んできた。
そこには乃愛の姿はない。
俊樹は星空と小さく砕け散った隕石の欠片が降る様を見上げた。まるで流星群のようだった。
不思議なことにあんなに会いたかった乃愛の
顔が思い出せない。確かに先日までここにいたのに。
声も思い出せない。この屋上でたくさん話したのに。
乃愛の記憶が薄れていく感覚があった。
彼女は確かにいたはずなのに。
やがて、俊樹の記憶の中から乃愛はいなくなった。
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