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その女は実力派のダンサーだった。ところが、怪我をして踊れなくなって失業し、直ってからも舞台に上がるチャンスはなく潰しが利かないので他の仕事をしても上手く行かず、無職の状態が続いて到頭、無一文になった。で、所有物をあらかた売り尽くし売る物が衣類しかなくなって、それも売り尽くし無一物になった。だから売り食いが出来なくなって、にっちもさっちもいかなくなった時に家賃滞納の廉でアパート管理人の後家さんに立ち退きを言い渡されてしまった。
女は着の身着のままアパートを出て路頭に迷い、夜中になると、追い剥ぎに遭って身包み剥がされ全てを失ってしまった。犯されなかっただけましかと女は強いて思い悲嘆に暮れながら身を隠すため森に入って行った。
その森の中は神秘的で木々の梢の間から漏れ差す星明かりが何故か非常に明るくてオーロラのように帯状に光り、木の葉や草花やシダや蔦に滴る夜露がそのオーロラによってイルミネーションのように輝いていた。だから森の外より森の中の方が遥かに明るい。
女は不思議に思いながらも奥の方に見えるもっと明るい所に惹かれ、ずんずん歩を進めて行った。よっぽど近づくと、それは発光体と同じく自ら光を放つ森の精たちの集いであることが分かった。で、女は、木陰に隠れて彼らの会話を聞くことにした。
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