TRIP番外編 『悪夢』

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このままではいけないと、イズはゼノの服を掴んで部屋のドアを開けた。 「ライラッ、ひとまず逃げますよ!」 掴んだ服ごとゼノを廊下に放り投げたイズは、振り向き様にライラにそう声をかけ、廊下で怯えているゼノの腕を強引に掴み、階段を降りる。 「逃げるって……、おいイズ」 迫る化け物から逃げた二人の後を、ライラも慌てて追いかける。 『おもちゃ、オモチャ、ボクノ、ドコ』 狭い部屋の中に無理やり瞳を押し込んでくる化け物は、長い手をドアの奥へと伸ばすが、ドアが狭すぎて、手は器用に挟まってしまい、動きを封じられてしまった。 一つ目の動きが止まり、3人は宿の裏へと走る。 が、恐怖に怯えるゼノがまるで走れない。普段なら一番に逃げてるところなのに、こんなときに限って、ガタガタと身体を震わせて硬直。 「ゼノ、走ってください!」 「怖くて、足が動かないよぉ」 「ったく、いいかお子様、大人しくしてろよ」 後から駆けつけたライラは、動けなくなってるゼノを小脇に抱えあげた。 「ありがとうございます、ライラ」 「イズ、走るぞ」 「はい」 腹と腰を器用に持ち上げて、ライラはゼノを抱えたまま走り出す。 とにかくここから遠くへ。 ── ガガガ…… ── 建物を壊しながら追ってくる化け物は、細く長い足のようなものを地面に突き刺しながら歩き、腕と思われるもので建物を掻き分けるように迫る。 『ドコいくの、ボクノ、おもちゃ』 性別不明の化け物は、片言のような奇っ怪な声を発しながら、3人の後ろを遅くも早くもないスピードで追いかけてくる。 目的はおそらくゼノで間違いないと、イズとライラは顔を見合わせたが、ゼノは化け物に心当たりはないと言った。 それに、おもちゃとは一体どういう意味なのか、二人は走りながら考えを巡らせていたが、ふとイズが足を止めた。
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