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話は戻り、3人は昨夜立ち寄った町で宿をとり、いつものように過ごしたはずだった。
だが、朝になっても夜のまま。
「なんか、すごく静かだよね……」
外からも中からも物音一つしないことに、ゼノがひきつった笑顔を見せた。
「そう言われれば、確かに静かすぎますね」
「おい、狐にでも化かされてるんじゃねぇーだろうな」
イズに言われ、そういえば人の気配すら感じられないと、ライラもまた冷や汗を浮かべる。
町が沈黙してしまったかのように、不気味に闇に飲まれている。
「ええっー、狐じゃなくて、タヌキだよ。ライたん仲間だと思われたんだよ」
「あ゛あ゛っ! そりぁあ、どういう意味だお子様」
「ライたん、タヌキそっくりだもん」
── ダンッ ──
ゼノが声を出した瞬間、床に身長ほどある大剣が突き刺さった。
突き刺したのはライラだ。
ライラの武器は大剣、イズの武器は槍だが、二人の武器はハクコクジュの加護を受けており、必要な時にだけ具現化する仕様。ちなみにゼノは武器を持たない、おまけに戦わない、逃げ専門の平和主義者。
「ライたん、宿壊さないでよぉ」
「てめえがくだらねえこと言うからだ」
大剣をしっかりと握りしめて、ライラはゼノに不敵な笑みを見せる。
「ライたんじゃなくて、今度からタヌたんにする?」
ゼノはライラを怒らせるのが日課。
「なあイズ、黒い尻尾の獣は鍋にしたら上手いか」
ピクピクと頬を引きつらせたライラは、無理やり作る笑顔でイズにそう問いかける。
黒い尻尾の獣=ゼノ。
「肉付きがあまりよくないので、美味しくないかと……」
「だったら、干物にするか」
「そうですね、噛めば味がでるかもしれませんね」
二人は淡々と話を進めるが、それを聞いているゼノは全くもって面白くない。
「僕なんか食べても美味しくないんだからっ!」
『見ぃーつけた』
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