TRIP番外編 『悪夢』

1/35
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ

TRIP番外編 『悪夢』

『見つけた……見つけた       ワタシのおもちゃ ボクの身体      ワタシに全部ちょーだい』 時計の針は壊れてしまったのだろうか? チクタクと時を刻む音を聞きながら、3人は小さな懐中時計を覗き込む。 「午前9時ですよね……」 金髪の綺麗な顔立ちの青年、イズ=ファートスはその手に乗せた時計を見ながら、そう口にした。 「だよな」 その横で声を出したのは、大柄で茶髪のツンツン頭の男、ライラ=トーズ。 「でも真っ暗だよ」 二人を押し退けるように時計を覗き込むは、長い黒髪を後ろに一つに結んだ、幼さの残る青年、ゼノ=クロノム。 3人は世界の中心を目指して旅をしている途中。 世界を創造した神であるハクコクジュに、ゼノを送り届けるために。 そう、ゼノは世界(神)が生み出した者である。 なぜ世界より生まれた者を、世界に送り届けることになったかというと、単純な話、ゼノが迷子だからなのだ。 ハクコクジュより生まれたのに、()(かい)という世界に放り出され、帰り道が分からないと泣き出して、森で出会ったライラとイズに送ってもらっている途中、というわけなのだが、世界の中心なんてどこにあるのかわかるはずもなく、3人はとりあえず旅をしている状態である。 その上、ゼノは武器を嫌い、争いを好まず、血が大嫌い。よって、戦わない。 強いのか、弱いのか、現在二人はその真実を知らない。相反する者より、ゼノは世界を壊すために生まれたと聞かされたことがあったが、ライラとイズはそれを本人に確かめることができていない。 それは、ゼノを失いたくないと願い、ゼノを信じているから。全てを聞くことで、全てが壊れてしまい、3人で旅が続けられなくなり、全部無くなる。そう考えてしまったから、ライラとイズは事の真相をゼノにどうしても聞けずにいる。 つまり、世界とゼノの秘密は現在謎に包まれたままである。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!