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坪内さんは私をベッドに優しく下ろすと、布団を掛けてくれた。
誰かに布団を掛けてもらうなんて、小さい頃親にされた以来かもしれない。
「起きたばっかりだから、寝れないですよ。」
「子守唄歌ってやろうか?」
坪内さんはベッドの脇に座って、私の髪を触る。
仕事用にひとつに束ねた髪を優しくほどいて、手ぐしで整えてくれた。
「子守唄だなんて、こっちが恥ずかしくなるのでやめてください。」
ピシャリと断ると、坪内さんは不満げな顔を見せた。
「何か食べたいものはあるか?」
「ないです。全然食欲がわかないから何も思い付かないです。」
横になっていると、段々自分が熱があるという感覚がわかってくる。
血が巡ってきて、体が熱いやら寒いやらよくわからない。
「よく、気付きましたね。」
「うん?」
「熱があること。」
自分でも全く気付かなかったのに。
「いつもと様子が違ってたからな。俺は秋山をよく見てるだろ。」
「何それ、恥ずかしい。」
「上司だからな。」
甘ったるい笑みを称えながら頭を撫でられる。
私は恥ずかしくなって布団で顔を半分隠した。
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