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「羅衣さん、分かりました」
息を切らしながら、浮いている私を見上げて報告する。
「あと40分しかないじゃない!遅いよ!」
もう空は暗く、何とも言えない、群青色と藍色の間くらいの色が空を覆っている。西の空も、うっすらと朱色が広がっているぐらい。
「すみません。集中できるところを探していたので」
「分かった。で?誰のものなの?」
「星の神です。どうやらこの石、『星引きの石』というらしく、流れ星を引いてしまうんだそうで」
「なるほど。この石を星の神に返せばいいのね」
「それがそう簡単にいかないんです。今日は羅衣さんも知っているとおり、流れ星が出るでしょう?その流れ星を、新しく作った星引きの石で引くそうで、ここに降りて来られないようなんです。星引きの石は私たちが返しにいかないといけないみたいなんです」
「そう。で?」
「しかし、私は飛べません」
は?
「飛べません」
は?
星の神が空から降りて来られないのなら、空に行かないといけないんでしょ?
飛べないと、空に行けないでしょ!
待って。私、浮いてる。
「私が行く」
「待ってください。それもいけません!持ち主の星の神はチカラが強いのです。コントロールもしてません!あなたにはチカラがあるんです!星の神に会えば羅衣さんの魂が滅びます!今、羅衣さんは魂ですから、滅んだら、永遠に生まれ変われませんよ!」
「それが?」
「それが?じゃありません!」
「じゃあ皆を見殺しにしろ、って言うの?」
「そういうわけじゃありませんが」
「私が、行く」
神様は私をしっかり見つめる。
「……分かりました。お願い、します」
頭を下げる神様が、唇を噛んでいる。
「石、貸して」
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