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01. きっかけ
夕飯の食器を片付けてリビングのソファに座り、私は独りでコーヒーを飲んでいた。夫は今日も残業で遅くなるらしい。見るともなくつけていたテレビのニュースが終わる頃、夫が帰宅した。
着替えることなく玄関からまっすぐリビングに来て、私の前に立った夫は、「おかえり」という私に返事もせず、開口一番にこう言った。
「離婚してほしい」
夫の言葉に私は耳を疑った。私が唖然としていると、夫がさらに続けて言った。
「子供が出来たんだ」
私は血の気が引くのを感じていた。そして、ああ、そういうことか、と妙に納得していた。
表面上は夫婦円満だったはずの私達。やっぱり壊れていたんだ。
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