宮村亮輔は何故振られたのか_10

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宮村亮輔は何故振られたのか_10

 事務所に入ってすぐの面談ブースにやってきた河村先生は、桃井課長の言うとおり、話しやすい気さくな雰囲気を持った人だった。  株式譲渡や税金のこと等をわかりやすく説明してくれる。榎本専務も河村先生にお任せすることに決めたようで、法務関係について積極的に質問されていた。  正式な契約は社長の了承を得てから後日することになったので、仮契約だけを済ませる。  それも終わり、榎本専務らのために戸を開けて待っていた僕の頭上に影が差した。日が陰ったように。  いやいや、ここは室内だからと見上げると、すぐ側に長身の男性が立っていた。  廊下を通ろうとしたところらしい。僕が開けたドアが邪魔してしまったようだ。 「すみません」 「いや、こちらこそ失礼」  艶のある低音。弁護士記章をつけためちゃ高そうなスーツ。  うわーかっけー、と僕が思っているとその人は頭を下げてすり抜けて行こうする。それを、室内の河村先生が呼び止めた。 「ああ、所長の桐木です。こちらは榎伸工業の榎本専務、大林部長。事業承継のご相談です」  河村先生がそう言うと、所長と呼ばれた男性がブースの中へと一歩進み、榎本専務に話しかけた。
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