先生が私の家に初めてのお泊まり_1

2/4
7208人が本棚に入れています
本棚に追加
/453ページ
「いま目開けて寝てた?」  からかうように笑いながら、隣席の桧山主任が鉛筆を渡してくれた。 「ありがとうございます。すみません。集中出来てませんでした」 「上松さんのチェック信頼しているからよろしく。ミス見逃し少ないから、私、楽させてもらってる」  主任は口でそう言ってるが、私だってミスはする。でも少ない方だとは思う。  総務課福利係で私はいま、社会保険料のチェックをしていた。今月から保険料が変わる人について、間違いがないかを精査する。私が青鉛筆でチェックして、主任が赤鉛筆でチェックする。ただ、それだけの単純作業。 でも、もし給与から天引きする保険料を間違うと、追納や戻入(れいにゅう)をしなければならないから、大事な作業のひとつなのに。  オンオフの切り替えは出来てる方だと自分では思っていたけど、今は心を桐木先生に支配されてる気がして怖い。仕事中にぼんやりするなんて初めてだった。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!