8131人が本棚に入れています
本棚に追加
「いま目開けて寝てた?」
からかうように笑いながら、隣席の桧山主任が鉛筆を渡してくれた。
「ありがとうございます。すみません。集中出来てませんでした」
「上松さんのチェック信頼しているからよろしく。ミス見逃し少ないから、私、楽させてもらってる」
主任は口でそう言ってるが、私だってミスはする。でも少ない方だとは思う。
総務課福利係で私はいま、社会保険料のチェックをしていた。今月から保険料が変わる人について、間違いがないかを精査する。私が青鉛筆でチェックして、主任が赤鉛筆でチェックする。ただ、それだけの単純作業。
でも、もし給与から天引きする保険料を間違うと、追納や戻入をしなければならないから、大事な作業のひとつなのに。
オンオフの切り替えは出来てる方だと自分では思っていたけど、今は心を桐木先生に支配されてる気がして怖い。仕事中にぼんやりするなんて初めてだった。
最初のコメントを投稿しよう!